Feeling-of-Knowing (FOK)とは自分の記憶していることに関する記憶で、メタ記憶のひとつである。私たちは今まで、記憶想起の対象として一般常識や名前を用いてFOKの強さと相関して活動が盛んになる部位を検出してきた。一方、心理学の分野では、FOKの元になっている情報は、想起する手がかり(cue)または想起する対象(target)のどちらの情報処理に基づいているかについて約40年に渡り論争されてきた。この問題に解答を与えるため、昨年度は、cueとtargetの意味情報を操作しながらFOKはそのどちらにも由来することを示す認知課題を開発した。現在は、次のステップとしてFOKがどちらの意味情報に由来するかによりFOKにどのような性質に違いがあるかを探索中である。そして、さらに今年度はcueとtargetに由来するFOKによる脳の活動がどのように異なるかを調べることを目標とする。また、昨年に英国エジンバラ大学、精神科に短期留学し、統合失調症とFOKの関連に関して共同実験を行う計画を立て、現在も実験が進行中である。同時に、我々がFOKの部位として特定した部位がFOKの部位として普遍的に検出できるかどうかを確かめる実験も行った。そこで、意味を含まない記憶として、代表として音楽記憶を選択し、第1段階として、言語と同様な手法を用いて、想起の成功(retrieval success)の部位について検出した。FOKの部位ではなく、想起の成功の部位について特定しようとした理由は、言語を用いた想起の実験はすでに確立されており、意味記憶を含まない音楽記憶とFOKの関連を調べる手始めとして適当と考えからである。その結果、右海馬、左前頭前野、左右外側側頭葉、右楔前部が音楽の記憶想起の成功のときに活動することを示し、今年の神経科学会で発表予定であり、現在は論文作成中である。
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