研究概要 |
胚性幹(ES)細胞由来神経幹細胞からドパミン(DA)ニューロンへの分化誘導において、ネスチン陽性神経幹細胞(NSC)へ低酸素条件およびサイトカイン混合物(LIF, IL-1β, IL-11,GDNF)を処置し、免疫染色法等により解析した。その結果、低酸素条件およびサイトカインの混合物の処置によりDA分化は促進されるが、相加的に作用しないことから、共通のシグナルを介するDA分化の促進が考えられた。そのため、hypoxia inducible factor (HIF)-1αに注目し解析を進めた。 低酸素およびLIFによりHIF-1α蛋白の増加が確認されたため、アンチセンス法によりHIF-1αを発現抑制させたところ、DAニューロンへの分化誘導が抑制された。すなわち、低酸素およびLIF処置によるNSCからDAニューロンへの分化誘導がHIF-1αを介した機構によることを証明した。 一方、中脳由来神経幹細胞(neurosphere)から神経への分化機構に関して、G1/S期に作用する細胞周期抑制剤(deferoxamine : DFO)の処置によるp27^<kip1>を介する神経分化の促進を報告したが、cdk5,p35およびp27^<kip1>の相互作用を各遺伝子発現の時間経過やcdk5抑製剤を用い解析を行った。その結果、cdk5抑製剤(roscorvitin : RS)の処置によりDFOによる神径分化促進作用が消失した。また、cdk5の局在は主に細胞質に、p27^<kip1>はの局在が主に核に発現することが観察された。この結果から、cdk5はp27^<kip1>の下流のシグナルにおいて神経分化に関与することが示唆された。以上、NSCからニューロン、さらにDAニューロンの分化機構において、p27^<kip1>、cdk5、HIF-1αが関与することが明らかになった。
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