研究課題/領域番号 |
16500205
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
池田 啓子 自治医科大学, 医学部, 助教授 (10265241)
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研究分担者 |
川上 潔 自治医科大学, 医学部, 教授 (10161283)
鬼丸 洋 昭和大学, 医学部, 助教授 (30177258)
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キーワード | ナトリウムポンプ / KCC2 / ノックアウトマウス / α2アイソフォーム / 呼吸中枢 |
研究概要 |
ほ乳類のすべての細胞に存在するNa, K-ATPaseは、ATPの加水分解エネルギーを利用し、細胞膜内外のNaイオンとKイオンの濃度勾配を形成するポンプである。αとβの2つのサブユニットから構成され各々複数のアイソフォームが存在する。α1アイソフォームはすべての細胞に存在するのに対し、α2アイソフォームは神経、筋肉等の興奮性組織に存在する。後者の発生過程や生体内における特異的な機能は最近まで不明であったため、申請者はα2遺伝子ノックアウトマウスを作成し、生化学的、電気生理学的に解析を試みた。摘出脳幹脊髄標本で呼吸活動を観察したところ、自発的な呼吸活動が欠如していた。電気刺激による応答は存在するため呼吸リズムを形成する素子としての神経細胞やネットワークは保持されていることがわかった。昨年度、野生型では、α2サブユニットとKCC2の機能共役が存在することを明らかにした。ホモマウスではこの機能共役が障害され、野生型では抑制性の活動がでる呼吸中枢領域で、興奮性神経活動に変換していることを電気生理学的に明らかにした。しかしこの障害のみでは自発的呼吸神経活動の欠損は充分に説明できなかった。今年度はその点を明らかにすべく解析を進めた。ホモマウスは神経細胞同士のつながりが障害されていることが電気生理学的に明らかになった。さらに組織学的(電顕)にホモマウスではシナプス小胞が有意に少ないことがわかった。ホモマウスの摘出脳幹脊髄標本を数時間にわかって還流下で電気刺激を行うと、電気生理学的にシナプスの結合が形成された。以上の結果から、α2サブユニットとKCC2の機能共役と、胎内での活動依存的シナプス結合が出生直後の正常の自発的な呼吸リズム形成に必須であることを明確にできた。
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