研究概要 |
本研究は、大脳皮質・第一次視覚野(VC)のシナプス可塑性における分子・細胞機構を解明することを目的とした.この可塑性は形態変化を伴うが、(1)いつどこで形の変化が始まるのか、(2)どんな分子が関与するのかは未だ不明である.そこでマウスの視覚野においてセリンプロテアーゼに注目し上記の2点について検討した. 1.眼優位可塑性の機能変化に伴う早期形態変化は、神経突起・スパインの剪定として現われることがわかった.すなわち、臨界期の野生型マウスを単眼遮蔽すると、VC興奮性錐体細胞のスパイン数は一過性に減少した.この変化は可塑性低下モデル(プラスミノーゲンアクチベーター[tPA]あるいはグルタミン酸脱炭酸酵素[GAD65]のノックアウトマウス[KO])に認められず、それぞれ可塑性誘導薬物投与により回復した. 2.スパインの剪定に見合う微細変化がシナプス前部において誘導される事をvesicular glutamate transporter (vGlut)を機能マーカーとして用い検討した.臨界期マウスの4日間単眼遮蔽によりVCでは、vGlut1(皮質内のから入力)は変化せず、vGlut2(外側膝状体からの入力)は4層付近で低下傾向があった.また、TTXの単眼投与によって、vGlut1,vGlut2ともにすべての層において遮断側で低下した.これらの変化は、スパインの剪定に匹敵した. 3.可塑性と負の相関がある細胞外ネット構造は、可塑性低下モデルにおいても正常に認められることがわかった. 4.tPAの基質プラスミノーゲンのKOマウスを用い、眼優位可塑性(機能変化)を調べたところ、臨界期の短期遮蔽では可塑性が低下している事がわかった.そこで、tPAと活性酵素プラスミンを用いて酵素消化実験を行うと、いくつかの細胞外基質がtPAあるいはプラスミンで修飾されることがわかってきた(新規基盤研究で続行決定).
|