研究概要 |
我々は今年度、老化モデルtransgenic (Tg) miceを用いて、microgliaと老化に関する関連を検討し、その結果を論文発表、学会報告した。 1)ミクログリア活性化とαシヌクレイン(α-syn)蓄積との関連を明らかにするために、ヒトαシヌクレイノパチー(PD, DLB, MSA)脳組織とα-syn変異Tg mice脳を病理学的に検討した。その結果、グリア細胞内αシヌクレインの異常蓄積は、オリゴデンドロサイトやアストロサイトと異なり、ミクログリアでは生じていないことが示唆された。ヒトαシヌクレイノパチーにおけるミクログリア活性化の程度は様々であり、病変部灰白質では貪食能や神経障害性因子(iNOS)を発現する活性化ミクログリアが神経細胞脱死と関連して出現することが示された。さらに神経細胞内α-syn沈着周囲ではミクログリアは充分に活性化されていないことが、ヒト脳およびTg mice脳で示された(Neuropathology 2005,Amsterdam)。 2)アミロイドβ蛋白(amyloid β protein : Aβ)沈着を認めるTg2576 mice (APPsw mice)を用い、老人斑とミクログリアの関係を経時的に検索した。その結果、APPswではpremature cored plaqueが生後7ヶ月から出現し、そのplaque周囲に細胞内Aβ42を有するニューロンないしミクログリアが存在することが蛍光抗体法で示され、Aβアミロイド沈着初期からのミクログリアの関与が示唆された(Neurosci Lett 395:37,2005)。 3)ヒトtauopathy脳と変異tau P301Lを有するtauを過剰発現するTg miceにおいて、ミクログリアの活性化はtau沈着と密接に関係するが、NFTやPick body自体が直接的な活性化因子となることはないことが示された(第16回国際神経病理学会発表予定、米国)。
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