研究課題/領域番号 |
16500215
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 道雄 富山大学, 医学部, 助教授 (40236013)
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研究分担者 |
川崎 康弘 富山大学, 附属病院, 講師 (80242519)
高橋 努 富山大学, 医学部, 助手 (60345577)
倉知 正佳 富山大学, 医学部, 教授 (80019603)
松井 三枝 富山大学, 医学部, 助教授 (70209485)
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キーワード | 海馬 / 扁桃体 / 前頭前野 / 磁気共鳴画像 / 体積計測 / 発達 / 統合失調症 |
研究概要 |
前年度の検討により、思春期に体積が増大することが明らかになった海馬と、海馬との機能的関連の深い扁桃体および前頭前野の体積を、健常者、統合失調症患者、および統合失調型障害患者において比較した。 対象と方法:説明と同意が得られた統合失調型障害患者25例、統合失調症患者53例、性・年齢などをマッチさせた健常者59例を対象とした。1.5TのMRIスキャナ(Magnetom Vision, Siemens)により全脳の三次元撮像を行い、1mm厚の冠状段スライスを用いて、関心領域法により内側側頭葉(扁桃体、海馬、海馬傍回)と前頭前野(上前頭回、中前頭回、下前頭回、腹内側前頭前野、眼窩野、直回)の体積を計測した。 結果:健常者と比較して、統合失調型障害患者と統合失調症患者において、扁桃体と海馬はともに減少していた。統合失調症患者では、健常者と比較して、両側の前頭前野全体、上・下前頭回、直回、左側の中前頭回の灰白質体積が減少していた。統合失調型障害患者では、右側の直回の体積減少がみられたが、右側の前頭前野全体、両側の中前頭回の灰白質体積は有意に増加していた。統合失調型障害群において、海馬体積と前頭前野灰白質体積の間に負の相関が認められた。 考察:扁桃体と海馬の体積減少は統合失調症圏に共通の形態学的基盤であり、さらに前頭前野の変化が広範囲に及ぶことが他の脳領域への抑制性コントロールの障害をもたらし、精神病症状の顕在化に重要な役割を果たすのかもしれない。また統合失調型障害患者における前頭前野体積の増大は、内側側頭葉の異常に対する発達的代償性変化の可能性があり、それが精神病症状の顕在化を抑止しているとも考えられる。 現在は、前頭前野体積の思春期健常者における発達的変化も併せて検討しており、今後、上記の病的変化との関連を明らかにするとともに、海馬の健常高齢者における体積変化も明らかにしたい。
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