研究課題
基盤研究(C)
ヒトの海馬およびその関連領域の形態的発達と、その統合失調症の病態生理における意義について、磁気共鳴画像(MRI)を用いて検討した。1.健常男子において、思春期前期に比較して、思春期後期では海馬および扁桃体の体積の増大が認められた。これらの結果から、健常者の海馬と扁桃体では、思春期にも脳形態の発達的変化が持続しており、髄鞘化に伴う白質の増加による可能性との関連が考えられた。2.統合失調症圏患者における海馬、扁桃体およびそれらと機能的に密接に関連する前頭前野の体積の変化について検討した。その結果、統合失調型障害患者と統合失調症患者において、扁桃体と海馬の体積はともに減少していた。統合失調症患者では、前頭前野灰白質体積が有意に減少していたが、統合失調型障害患者では保たれていた。これらの結果から、扁桃体と海馬の体積減少は統合失調症圏に共通の形態学的基盤であり、さらに前頭前野の変化が広範囲に及ぶことが他の脳領域への抑制性コントロールの障害をもたらし、精神病症状の顕在化に重要な役割を果たすことが示唆された。3.統合失調症患者における海馬や扁桃体の体積と、神経発達障害の指標である大脳正中構造の異常、すなわち透明中隔腔(CSP)と視床間橋(AI)との関連について検討した。その結果、大きなCSPを持つ統合失調症圏障害患者では、持たない患者に比較して、両側の扁桃体と左側の海馬傍回の体積が有意に小さかった。またAIを欠損する統合失調症患者の両側扁桃体体積は、欠損しない患者より有意に小さかった。これらの結果から、内側側頭葉の形態変化は、早期の発達障害に関連する、統合失調症への脆弱性のマーカーであることが支持された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Cerebral Cortex 15
ページ: 187-193
Psychological Medicine 35
ページ: 549-560
Brain 128
ページ: 2109-2122