研究概要 |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は脳の主要な細胞外マトリクスである。CSPGは、脳の成熟に伴い特定の神経群に発現しPerineuronal netsと呼ばれる構造を形成する。近年まで、このPerineuronal netsの機能に関してはまったく解明が進んでいなかったが、CSPGを分解する酵素であるChondroitinase ABCを注入すると、視覚野の可塑性が回復することより、神経回路の可塑性と関わっている可能性が示唆された。 本年度の研究においては、CSPGで形成されたperineuronal netsの、形成要因、機能解析を進めた。 1)視床下部下垂体後葉系におけるオキシトシン、バソプレッシン神経にはPhosphacanやNeurocanなどのCSPGが存在し、神経活動に依存してDownregulationされることを見出した。このdownregulationはCSPGのmRNA発現低下によるものではなく、tissue plasminogen activator-plasminやmatrix methalloproteaseなどのマトリクス分解系酵素が神経終末から放出され積極的にこれらのCSPGを分解することが分かった(Brain Res,2004,Neuroscience投稿中)。 2)perineuronal netsの形成機構として、グリア細胞を含まない神経単独の培養系でperineuronal netsの形成が生じることを見出した。この成果は、perineuronal netsが、神経細胞由来であることを証明するとともに、in vitro系でのperineuronal nets機能解析に有用であることを示している(Neuroscience投稿中)。 3)神経細胞由来のCSPGの解析を行ったところPhosphacanやreceptor-type protein-tyrosine phosphataseを合成していることが判明した(Neuroscience,2005)。
|