研究概要 |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は高度に硫酸化した糖鎖がコアタンパクに結合した複合糖タンパクである。CSPGは、腱や軟骨の構成成分として知られているが、脳では主要な細胞外マトリクスとして働いている。本研究による研究成果として以下の点を上げることができる。 1)視床下部バソプレッシン神経の形態学的可塑性において、CSPGのひとつであるphaca/RPTPbetaは神経活動依存的に発現量が変化した(Brain Res,2004)。これには、バソレッシン神経の樹状突起や終末部の分泌顆粒に存在する細胞外マトリクス分解酵素tissue plasminogen activator (tPA)の、神経活動による放出により分解されたものと考えられる(Brain Res,2005)。 2)小脳の生後発生過程におけるphosphacanの局在を調べたところ、生後10-15にごろをピークに分子層に顕著な局在が観察された。電子顕微鏡でさらに詳細を調べると、parallel fiberの細胞膜に局在していた。顆粒細胞培養系で、phosphacanの作用を調べると、軸索伸長や細胞接着を阻害した。一方、phosphacanは、軸索の束化を促進することから、phosphacan小脳の層構造形成に関与することが示唆された(Mol. & Cell. Neuorsci.2005)。 3)CSPGは、脳の成熟とともにある特定の神経細胞群に発現が集中する。CSPGに富んだこの構造はperineuronal netsと呼ばれている。大脳の神経細胞を培養すると、グリア細胞が存在していなくても、CSPGに富んだperineuronal netsが形成されることがわかり、perineuronal netsの由来が神経細胞であることが明らかになった(neuroscience,2005)。
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