研究概要 |
抗肥満ホルモン、レプチンの脳内情報伝達を担うメラノコルチン作動性神経伝導路の一つを明らかにするために、視床下部室傍核(PVH)を経由する視床下部弓状核(Arc)から脊髄中間質外側核(IML)への連絡路を想定し、以下のマウスを用いて研究を進めている。1)野生型マウス、2)メラノコルチン4受容体(MC4-R)プロモーターの支配下に緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するMC4-R/GFPトランスジェニックマウス、3)Cre-lox系を用いて脳領域特異的にMC4-Rを再発現させうるMC4-R欠損マウスである。 その結果、1)MC4-R陽性PVHニューロンがメラノコルチン産生Arcニューロンからの入力を受けること、2)交感神経節前ニューロンが内在するIMLが、MC4-R陽性PVHニューロンからの入力を受けること、すなわちメラノコルチン系が交感神経系を介してエネルギー代謝を促進する可能性、3)Cre-lox系によりPVHにのみMC4-Rを発現させると、MC4-R欠損マウスが示す肥満形質が改善すること、すなわちMC4-R陽性PVHニューロンがレプチン作動性メラノコルチン系によるエネルギー代謝促進作用を担うことがわかった。 本研究に先立ち、中枢レプチン・メラノコルチン系に対して相反的に機能する中枢ニューロペプチドY(NPY)/Y1受容体(NPY/Y1-R)系も併せて解析していた。その結果、Y1-Rを共発現するMC4-R陽性PVH細胞を見出し、PVHに発現するMC4-Rのエネルギー代謝における重要性をさらに裏づけた(Kishi et al.,Journal of Comparative Neurology)。この論文発表に関する科学研究費補助金からの支出はない。 以上の成果の一部と多数の肥満研究を歴史的に総括し、エネルギー代謝および摂食行動の中枢制御機構に関する総説を執筆した(Kishi and Elmquist,Molecular Psychiatry)。
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