研究課題/領域番号 |
16500229
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
黒田 優 東邦大学, 医学部, 教授 (10170135)
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研究分担者 |
横藤田 純子 東邦大学, 医学部, 助手 (80114792)
村上 邦夫 東邦大学, 医学部, 助手 (60120317)
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キーワード | 前頭前野 / 視床背内側核 / 電顕 / シナプス / γ-アミノ酪酸 / ドーパミン |
研究概要 |
前頭前野と視床背内側核の間には興奮性単シナプス性フィードバック・ループが存在し、この興奮性反響回路が作業記憶の保持に寄与するとの仮説を提唱している。この興奮性ループを皮質内抑制性神経細胞が調整していることをすでに解明したが、さらに、大脳皮質に広く投射している腹側被蓋野(VTA)からの皮質入力もこの作業記憶回路に影響を与えていると推測される。これを実証するために、今年度は主に前頭前野におけるVTA神経終末が形成するシナプス形態を検索した。ラットVTAに順行性トレーサー(PHA-L, WGA-HRP)を注入し、前頭前野における標識神経終末を電顕観察した。その結果、VTA神経終末は直径1μm以下の小型のものから2μm以上の大型のものまでの広いサイズを示した。一般的に、小型の神経終末は径の細い樹状突起もしくは棘に終わり、一方、大型のそれは径の太い近位樹状突起に終末していた。シナプスタイプは、興味深いことに対称性と非対称性シナプスの両方を示した。小型VTA神経終末は非対称性シナプスを、大型神経終末は対称性シナプスを形成する傾向をみせた。しかし、大型VTA神経終末が非対称性シナプスを形成することもあった。神経伝達物質の検索も意図した包埋後免疫電顕法と神経標識法を組み合わせた予備実験では、対称性シナプスを形成するVTA神経終末の少なくとも一部はγ-アミノ酪酸(GABA)作動性であることが明らかになった。 以上の所見は、前頭前野と視床背内側核の間に存在する作業記憶回路を腹側被蓋野が皮質外抑制系として制御していることを示唆するものであり、来年度以降、定量的解析を含めた検索を実施する所存である。
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