研究課題
Argyrophilic grain disease(AGD)は高齢者の認知障害を起こす孤発性のタウオパチーとして重要である。AGDの出現は70歳代から増加するとされているが、百寿者における頻度はこれまで報告されていない。われわれは、愛知医大加齢医科学研究所にある3328剖検例中の32例の百寿者のAGDの出現を検討した。ホルマリン固定パラフィン包埋した脳組織の大脳皮質、基底核、脳幹部の各切片にGallyas-Braak嗜銀染色、リン酸化タウ(AT-8)抗体、4リピートタウを認識するRD4、Exon10の免疫染色を用いて検討した。32例中10例(31.3%)にAGDを認め、認知症が確認されている23例中9例(39.1%)にAGDが確認され、認知障害のない9例では1例(11.1%)にみられたのみであり、認知症の背景病理像として有意な出現(p<0.05)であった。アルツハイマー病の病理像を示す12例中5例(41.7%)、アルツハイマー神経原線維優位型認知症4例中1例(25%)にAGDの合併を認めた。認知症23例中純粋なAGDは3例(13%)であった。百寿者においてもAGDの頻度は高く、他の報告と同様に認知症の原因疾患としてAGDは重要であることが確認された。一方AGDは初老期にも出現することがあり、臨床的にピック病と診断された症例は、病理学的にはAGDであった本例では高齢者にみられるAGDに比してArgyrophilic grainの出現量が多く分布も辺縁系をこえてより広範囲であり、免疫染色では細胞内のリン酸化タウの蓄積はより高度であった。このようにAGDは高齢の認知症の原因疾患のみならず、超高齢者や初老期認知症の重要な原因疾患であることが明らかとなった。AGDの病理学的なstagingの試みもあるが、AGDにおける脳全体におけるタウの発現に関してはまだ不明な点とあり、さらに病理学的検討が必要である。
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