1)Argyrophilic Grain Dementia(AGD)の出現頻度 当施設3328剖検例中100歳以上の高齢者32例に関して検討した。(男女比5:27、平均年齢102.9±3.4歳(100〜116歳))。AGは32人中10人(31.3%)にみられた。32人中認知症を伴った23例中9例(39.1%)にAGが出現したのに対して、認知症のみられない9例では1例(11.1%)で、認知症のある群で優位にAGの出現を認めた(P<0.05)。背景疾患との関係では、AGはAD12例中5例(41.7%)、神経原線維優位型認知症4例中1例(25%)にみられ、他の神経変性疾患を伴わない「純粋型」AGDと診断されたのは認知症23例中3例(13%)と認知症のない1例であった。 ALS110例におけるAGの出現頻度を検討した。平均年齢65歳(32歳〜86歳)、男:女=76:34、平均罹病期間45ケ月、年齢構成は30歳〜39歳2名、40歳〜49歳9名、50歳〜59歳19名、60歳〜69歳43名、70歳〜79歳30名、80歳〜7名であった。AGは110例中22例(20%)、60歳未満0名、60歳〜69歳6名(14%)、70歳〜79歳13名(43%)、80歳〜3名(43%)に確認された。AGは60歳未満にはみられず、加齢とともに増加傾向を示し、7例に臨床的に精神症状が記載されていた。 他のタウオパチーとの合併では進行性核上性麻痺(PSP)60例中9例(15%)、大脳皮質基底核変性症(CBD)19例中13例(68%)にみられ、CBDでは明らかに他疾患より高頻度にみられた。 2)AGの分布 AGは迂回回、海馬CA1から支脚、内嗅領皮質、経内嗅領皮質、扁桃核、島葉などの辺縁系に出現し、AGの出現領域にはタウ陽性のpretangle、ballooned neuron、coiled bodyの出現を認め、AGの出現分布様式は認知障害や背景疾患の有無にかかわらず基本的には同一であった。 3)タウアイソフォームの免疫組織化学 ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて4リピートタウを特異的に認識する抗体と3リピートタウを特異的に認識する抗体によるタウアイソフォームの免疫組織化学染色では、AGは4リピートタウに強い陽性を示し、3リピートタウには陰性であった。
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