セロトニン作動性イオンチャネル型受容体5HT3は、これまで3A、3B 2つのサブタイプが知られていたが、最近新たに‘3C'と名付けられた類似受容体がクローニングされた。この5HT3Cのヒトゲノム配列を解析した結果、5HT3C以外に新規のイオンチャネル型受容体遺伝子候補を3つ同定し、L1/3D/3Eと呼称した。興味深いことにこれらの受容体遺伝子はヒト染色体3q27.1に全てが同方向にタンデムにコードされていた。ヒト組織(心臓・脳・胎盤・肺・肝臓・骨格筋・腎臓・膵臓)での各遺伝子発現強度の差異をみるために、全てのcDNA塩基配列に共通する領域からプライマー対を設定しreverse transcriptase polymerase chain reaction (RT-PCR)法とrestriction fragment length polymorphism (RFLP)を用いて解析した。 その結果、5HT3Eは調べた全ての組織においてその発現が認められず、pseudogene偽遺伝子であると考えられる。他の遺伝子発現を組織別にみると、心臓では5HT3Dが、脳・肺・肝臓では5HT3Cが各々単独で発現が認められたのに対し、骨格筋では5HT3Dと5HT3L1が、胎盤・腎臓・膵臓では5HT3C/3D/L1の共発現が認められた。特に腎臓と膵臓では5HT3Dと5HT3L1において約30塩基対長いヴァリアントの発現を認めた。以上のことから、これらの遺伝子産物は様々な組織において、多くのスプライシングヴァリアントを発現しつつ、イオンチャネル型受容体として多彩な機能を果たしているものと考えられる。
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