本研究の目的は、神経細胞内に蓄積されたAssがどのような遺伝子群を誘導するのかを解析し、神経細胞死誘導の分子機構を明らかにすることである。昨年度の研究によって、Assを含むAPP-CTFss(APPのC末端断片)を導入した神経細胞での細胞死が、hrGFPの発現よりも早く起こることがわかっていた。そこで、今年度は、遺伝子導入後の発現が早い、H-2KKを共発現させることを利用して、APP-CTFssを発現した神経細胞を効率的に集める方法を試みた。APP-CTFssをMACSelect kk発現ベクターに組み込み、初代培養神経細胞に導入した。導入16時間後に、H-2KKの発現を免疫組織化学によって調べた。APP-CTFss-mycを発現している神経細胞でも、H-2KKの発現が弱く、これを利用して、APP-CTFssを発現した神経細胞だけを集めることはできなかった。そこで、APP-CTFssを発現した神経細胞だけを集めることを断念し、APP-CTFss-myc-IRES-hrGFPを導入した細胞(導入後16時間培養)を含む全神経細胞からRNAを調整した。対照として、IRES-hrGFP導入細胞を含む全神経細胞からRNAを調整した。常法に従い、cRNA probeを作製し、Agilent Oligo Microarrayとハイブリダイズさせた。その結果、APP-CTFssによって発現誘導される遺伝子として23種類が、発現抑制される遺伝子として23種類の遺伝子が同定された。現在、これらの遺伝子の発現変化をQRT-PCR、または、Northern blottingによって確認している。
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