本研究の目的は、神経細胞内に蓄積されたABがどのような遺伝子群を誘導するのかを解析し、神経細胞死誘導の分子機構を明らかにすることである。研究成果は以下のとおりである。(1)Aβを含むAPP-CTFβ(C99)-myc-IRES-hrGFP cDNAを神経細胞に導入し、細胞内Aβに細胞毒性があるかどうかを調べた。C99 cDNA導入細胞では細胞死が起こったが、遺伝子導入細胞をanti-myc抗体で検出した場合とhrGFP蛍光で検出した場合とでは、細胞死のtime courseや程度が異なっていた。Myc陽性細胞では細胞死が早くおこり、細胞死の程度も大きかった。これはC99のC-末端(myc tagを含む)が分解されず蓄積した細胞で細胞死が起こることを示唆した。(2)C99発現細胞における遺伝子発現変化の網羅的解析:hrGFP蛍光をマーカーにC99発現細胞の精製を試みたが、失敗に終わった。そこで、細胞の精製をせずに、microarray解析を行い、C99発現細胞で発現変化する遺伝子46種類を同定した。遺伝子発現変化を確認するために、変化の大きかった10遺伝子を対象にQRT-PCR解析を行った。Negative controlとして、myc発現細胞とΔ126MAP1B(細胞死を誘導しない)発現細胞を用いた。 C99発現細胞での遺伝子発現変化は、myc発現細胞と比較した場合には確認できなかったが、Δ126MAP1B発現細胞との比較では、有意な発現変化の認められた遺伝子があった。(3)現在、C99の対照として、APP-CTF alpha(C83)やC99-D644Aを検討しており、それらをnegative controlとして、 QRT-PCR解析を行う予定である。
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