βアミロイド(Aβ)は、凝集により神経毒性を得る。Aβに由来する多様な凝集体の中で、10-15nmの新たな球状Aβ凝集体「アミロスフェロイド」だけに、非常に強い神経毒性が存在することを新たに見出した。本研究では、アミロスフェロイド形成機構と神経細胞死の解明から、アルツハイマー病発症の謎に迫ろうとしている。今年度、各種溶媒環境におけるアミロスフェロイド形成を検証した結果、アミロスフェロイドは生理的pH・イオン強度の溶媒環境下、特にリン酸緩衝液の存在下で回転撹拌することで最も良く形成される一方、線維は緩衝剤の有無を問わず酸性条件、即ちタンパク質の変性条件下で形成されることを明らかにした。どのような溶媒条件においても、神経毒性は10-15nmのアミロスフェロイド形成量とのみ相関しており、アミロスフェロイド形成のメカニズムを明らかにすることが今後、発症の開始を解明する糸口となることが改めて示された。そこで、金コロイドを核として、直径が10-15nmに均一に分布する人工アミロスフェロイド(擬似Aβ球)を作製し、それに毒性があるのか、表面構造はアミロスフェロイドに類似しているか等のタンパク質化学的解析を行った。現在、初代培養神経細胞に投与し、毒性があるのかどうかを評価するとともに、その挙動を可視化しようとしている。
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