ロテノンおよびマンガンの神経毒性機構を調べるために、ラット線条体スライスとラット副腎髄質由来のPC12細胞を用いて以下の知見を得た。ラット線条体スライス系ではロテノンがドーパミン神経のチロシン水酸化反応を阻害することを見出した。PC12培養細胞系では、1)ロテノンはカスパーゼの活性化およびDNAの断片化を誘導したが、JNK経路およびp38MAPKを活性化しなかった。2)NGFはロテノンによる活性酸素種の生成を抑制することにより細胞死を抑制した。3)ロテノンと同様アポトーシスを誘導するマンガンはカスパーゼ-3を活性化し、カスパーゼ-3のmRNAおよびタンパク質そのものも増加させることを見出した。また、ドーパミン神経保護物質を創製するために、アポトーシスのハイスループットスクリーニングアッセイとして微量の多検体を処理できるカスパーゼ-3アッセイを確立した。神経突起伸張作用があることで知られるシクロペンテノン型プロスタグランディンの誘導体を合成し、ロテノン、マンガンおよびグルタミン酸により活性化されるカスパーゼ-3を抑制する化合物のスクリーニングを行った。これまでに44種類の誘導体を合成し、5種類の誘導体がマンガンおよびグルタミン酸によるアポトーシスを阻害することが明らかとなった。今後はカスパーゼ-3のハイースループットアッセイ系を用い、化合物のスクリーニングを続け、ドーパミン神経保護物質を見出しその作用機構の解析を進めていく。また、モデル動物に応用し、パーキンソン病などの神経疾患に有効な治療薬および予防薬の開発をめざした展開研究にも着手する予定である。
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