研究概要 |
本研究において、PC12細胞、後根神経節細胞、海馬神経細胞を用い、RNA干渉法とFRETイメージングを組み合わせて、神経回路形成のキー分子であるG蛋白質について、予定した研究を行った。これにより、NGF刺激したPC12細胞でのRac1とCdc42の活性化が、「細胞全体での一過性の初期応答」と「局所的な活性化が繰り返し起きる後期応答」に分かれること、初期応答・後期応答ともに、G蛋白質活性化因子であるVav2とVav3の働きによるものであることがわかった。さらにPI3キナーゼ産物であるPI(3,4,5)P_3のFRETモニター分子を併用した解析を行い、NGFで刺激したPC12細胞の神経突起先端部において、PI3キナーゼとRac1/Cdc42の間でポジティブフィードバックループが局所的に回っていることを明らかにした。これは、神経細胞の形態形成において、機能分子の間のフィードバックループの存在を実証した初めての例である。後根神経節細胞の成長円錐は神経回路ガイダンスの起きる場として数多くの研究例がある。FRETイメージングにより進展中の成長円錐でのG蛋白質の活性化イメージングを行い、従来、突起伸展を負に制御する因子であると思われていたRhoAが、進展中の成長円錐で高い活性を保持していることを見出した。成長円錐でのRhoAの高活性は、成長円錐の扇状に広がった形態を維持するのに寄与していると考えられる。また、海馬神経細胞の高密度長期培養系を用いて、後シナプス部位でのRas及びRhoファミリー分子の活性化イメージングを進め、それぞれの分子ごとにスパインでの活性化の様子に違いがあることを示すことができた。
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