研究概要 |
パーキンソン病(PD)の疾患遺伝子としてα-シヌクレインやパーキン等が発見され、ユビキチン・プロテアソーム系の異常とPD発症との関連性が注目されている。最近、α-シヌクレインが誘発する培養神経細胞のアポトーシスが、チロシン水酸化酵素(TH)のインヒビターで抑制されることから、神経細胞死はTHから合成されたドーパミン(DA)の働きに関連していることが報告された。さらに、PD患者の脳内では、カルパインの発現量が著しく増加すること、THのN端はカルパインにより切断されやすいことが報告され、PD患者の神経細胞内ではTHのN端が切断されていることが推察された。しかし、THの低分子量化がDA合成に如何なる影響を与えるかについては全く知られていない。 平成16年度に引き続いて研究を推進した結果、THのN端の削除は本酵素の細胞内安定性を著しく高めること、その原因として、THのN端にはプロテアソームの標的となるPESTモチーフ(Proline, Glutamate/Aspartate, Serine and Threonine Motif)が存在することを発見した。すなわち、THのN端は本酵素の細胞内安定性に対して重要な役割を有しており、DA合成量に影響を与えていることを明らかにした。 また、この細胞内安定性には、N端領域に存在するSer残基のリン酸化とPESTモチーフとの相互作用が関与する可能性を予測した。特に、Ser^<40>のリン酸化はTHの細胞内安定性に影響を与えないのに対して、PEST配列に近接したSer^<19>のリン酸化はTHの細胞内安定性に影響を与えている可能性があることを発見した。
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