研究課題
本研究は、中枢神経系における神経細胞の分化機構を細胞表面抗原の発現を指標に分子レベルで明らかにするとともに、その成果を再生医学へと応用していくことを目的としている。本年度は、RANDAM-2の発現を指標に、神経幹細胞(NSCs)の単離・同定を試みた。試料は、マウスE13.5の終脳をWeiss and Reynold (1992)の方法によって調整して得たneurosphereである。最初に、neurosphere由来細胞のFACS解析のための適切なscatter gatingを決定した。それを"a"scatter gatingとした。"a"scatter gating中の細胞の大きさは、直径約5-15μmの範囲であった。次に、"a"scatter gating中の細胞表面上における各膜抗原(SKY-2 mAb、RANDAM-2を認識;mouseCD24(mCD24)mAb、造血幹細胞表面抗原を認識;PNA、造血幹細胞表面抗原を認識)の発現パターンについて解析を行った。その結果、"a"scatter gatingの中の細胞は、RANDMA-2の発現量の違いによって2つの細胞群(RANDMA-2^<high+>とRANDAM-2^<low+/->)に分けられた。RANDMA-2^<high+>細胞群とRANDAM-2^<low+/->細胞群のa-scatter gating中に占める割合は、それぞれ4.1%と4.6%であった。次に、それらの細胞をFACS Ariaを用いてソーティングし、それらの細胞の自己増殖能ならびに分化能について解析を行った。その結果、RANDMA-2^<high+>細胞群は極めて高い自己増殖能を示したのに対して、RANDMA-2^<low+/->細胞群ではその能力の低いことが判明した。次いで、それらの分化能について解析したところ、RANDMA-2^<high+>細胞群由来のneurosphereからは神経細胞、アストログリアならびにオリゴデンドログリアの中枢神経系を構成する主要な三つの細胞系譜への分化が観察された。一方、RANDMA-2^<low+/->細胞群由来のneurosphereからは神経細胞のみの分化が観察された。これらのことは、RANDMA-2^<high+>細胞群はNSCsを、RANDMA-2^<low+/->細胞群は神経細胞への終末分化の進んだ細胞をそれぞれ多く含んでいる細胞集団であることを明示している。本研究の結果は、RANDMA-2はpositive selectionによるFACSソーティングでのNSCs単離のための有効な一つの細胞表面抗原とみなされることを示すものである。今後、ヒトでの解析のために、RANDMA-2のヒトホモローグ分子の同定と、その認識mAbの作製を試みたいと考えている。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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