本研究の目的は、脊椎動物の中枢神経系に存在するCa^<2+>チャンネルの中で最も発現量の高いP/Q型チャンネルに対する蛋白リン酸化酵素A(PKA)による活性調節の、in vivoにおける生理的意義と神経発生における役割を明らかにすることである。このため、PKAによるP/Q型チャンネル活性調節に必須のスレオニン残基(α1AサブユニットC末端に存在する。Thr-PKAと命名)が位置するexonを含む核酸長約20kbのα1Aサブユニット遺伝子を、マウスゲノムライブラリーからクローン化し、シーケンス解析によりexon-intron構造を決定した。次に、大腸菌における相同組換え法を樹立して、1)Thr-PKAをアラニンに置換し、2)Thr-PKAが位置するexonに隣接する上流のintronでsplicing部位から少なくとも50bp以上離れた部位に、ユニークな2種類の制限酵素部位(Pac I、Pme I)を挿入し、さらに、3)このゲノムクローンの5'端500bpをユニークなSwa I制限酵素部位と置換した。このPac IとPme I部位にloxP-STOP(transcriptional/translational stop cassette)-NEO(相同組換えマーカーのneo遺伝子発現ユニット)-loxPを、Swa I部位に非相同組換えマーカーのtk遺伝子発現ユニットをそれぞれ挿入し、ターゲティングベクターを完成した。このターゲティングベクターを直線化し、ES細胞に電気穿孔法で導入した。G418とganciclovirによる濃縮法で、ES細胞170個から7個の相同組換えを起こしたES細胞を、削除した5'端の一部をプローブとして用いたSouthern解析により選別した。これら選別したES細胞をマウス胚盤胞に微量注入し、キメラマウスを現在作製中である。
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