本研究の目的は、脊椎動物の中枢神経系に存在する電位依存性Ca^<2+>チャンネルの中で、最も発現量の高いP/Q型チャンネルに対する蛋白リン酸化酵素A(PKA)による活性調節の、in vivoにおける生理的意義と神経発生における役割を明らかにすることである。このため、α1AサブユニットC末端に存在し、PKAによるP/Q型チャンネル活性調節に必須のスレオニン残基(Thr)をアラニン(Ala)に置換したノックインマウス作製を試みた。このThr-Ala置換とそのexon近傍のintronにloxP-STOP(transcriptional/translational stop cassette)-NEO(相同組換えマーカーのneo遺伝子発現ユニット)-loxPが、相同組換えにより挿入されたES細胞を昨年に引き続きSouthern解析により選別し、最終的に250個のES細胞から15個の相同組換えを起こしたES細胞が得られた。このES細胞では、loxP間のSTOP-NEO配列が存在するときにはα1AサブユニットC末端が欠損し、loxP間が欠失するとThr-Ala置換が生じる。そのため、chicken β actin promoterとhCMV immediate early enhancerの下流にCre recombinaseとIRES配列を介してpuromycin耐性遺伝子を繋いだ発現ベクターを構築し、電気穿孔法でこれらのES細胞に導入し、puromycinで48時間培養した後G418でneomycin耐性を失った細胞を選別し、Southern解析により上記loxP間の欠失を確認した。以上のES細胞をマウス胚細胞に微量注入し、キメラマウスを現在作製中である。使用したES細胞はY染色体をもつ雄の細胞であるため、一部の雄のキメラマウスは正常雌マウスとかけ合わせ、毛色によりヘテロ接合型マウスを選別している。
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