研究概要 |
過食は、肥満、2型糖尿病の成因となる重要な生活習慣因子であるが、その予防や治療は確立していない。脳内セロトニン系は、5-HT2C受容体,5-HT1B受容体を介して摂食抑制系の刺激を伝達することが知られており、胃から分泌されるグレリンは摂食促進系の刺激を末梢から中枢に伝達することが知られている。本研究では脳内セロトニン系とグレリンの関係をマウスで検討した。 1)空腹時に視床下部の5-HT2C受容体,5-HT1B受容体の遺伝子発現は2倍以上に増強して、血中活性型グレリン濃度が上昇した。5-HT2C受容体と5-HT1B受容体を介して摂食抑制を起こすセロトニン系作動薬(mCPP,フェンフルラミン)を腹腔内投与すると空腹時の血中活性型グレリン濃度が低下し、視床下部ではCART、POMCの遺伝子発現が増強したが、視床下部でのNPY,AGRP、グレリンの遺伝子発現は不変だった。これらの結果から、セロトニン系は、視床下部でPOMC、CARTを介して末梢血中の活性型グレリン濃度を低下させる作用をもち、脳内セロトニン系と血中の活性型グレリンには生体内で負のフィードバックシステムが存在することが示唆された。 2)C57BL6Jマウスに、3-4匹の集団ケージと個別ケージ飼育に分けると、絶食で24時間後には個別ケージのマウスの方が体重、脂肪組織、血中インスリン濃度が有意に低下し、活性型グレリン濃度が上昇した。一方、視床下部における5-HT2C受容体、NPY,POMCの遺伝子発現には両群間で差が認められなかった。 3)高脂肪食を10日間与えたマウスは、同期間低脂肪食を与えたマウスと比べ、体重と飽食時の血中グレリン濃度には差がないが、空腹時のグレリン濃度の上昇が減弱した。視床下部では、5-HT2C受容体の遺伝子発現は有意に増強したが、NPY、POMCの遺伝子発現には差が認められなかった。
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