研究概要 |
本研究では,サル前部下側頭皮質「顔」応答ニューロンにより,view-independentな「顔」のアイデンティティの記憶がどのように表現するのか,また,view-independentな「顔」のアイデンティティの記憶はどのように検索されるのかを明らかにする目的で,昨年度に引き続き,「顔」のアイデンティティに基づく非対称的対連合課題(I-APA課題)遂行中のサル前部下側頭皮質TEav野のニューロン活動を記録・解析した. 1.I-APA課題:サルはあらかじめ4つの連合対を学習する.各連合対は一種類の「図形」と一人の人物の5方向の「顔」からなる.各試行では,サルが固視点に固視した後,手掛かり刺激(cue:「図形」または「顔」)が呈示され一定または任意の遅延期間の後,テスト刺激(手掛かり刺激が「顔」の場合は「図形」,手掛かり刺激が「図形」の場合は「顔」)が継時的に呈示される.サルは手掛かり刺激と連合対をなすテスト刺激を同定することが要求される. 2.「顔」→「図形」試行と「図形」→「顔」試行:「図形」が手掛かり刺激として呈示され,遅延期間後に各種の「顔」がテスト刺激として呈示される「図形」→「顔」試行と,逆に,「顔」が手掛かり刺激として呈示され,遅延期間後に各種の「図形」が正解または不正テスト刺激として呈示される「顔」→「図形」試行の二種類の試行がある. TEav野から148個の「顔」に応答性のあるニューロンを記録し,29個が,特定の「図形」と「顔」のアイデンティティの連合対に対して選択的な応答を示した(連合対選択的ニューロン).これらの連合対選択的ニューロンの特定の「顔」のアイデンティティに対する応答は,「顔」の向きに対する選択性を有していた.すなわち,TEav野においてview-dependentな「顔」の表現がなされていることが示唆された.また,「図形」→「顔」試行において,「顔」のアイデンティティに選択的な予測的遅延活動を有するものが少数存在した(7個).したがって,「顔」の記憶の検索においてはview-independentな情報が使用されていることが示唆された.
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