研究概要 |
内皮由来弛緩因子の中で内皮由来過分極因子(EDHF)は近年注目され、重要な因子であることが認識されているが、その作用機構は不明である。本研究は、従来からの電気生理学的な解析によるEDHFの研究に加えて、分子生物学的な視点から、EDHFの反応機構を検討し、その全容を解明することを目的とした。 まず、EDHF反応に関与すると考えられる、Ca^<2+>-activated K^+ channel(SK1,SK2,SK3,IK,BK)をcloningした。RT-PCRなどの結果から、EDHF反応にはSK3,IKが関与すると思われた。SK3,IKをアデノウイルスに組み込み、ラット腸間膜動脈に過剰発現させてEDHF反応を検討した。動脈は、単離し、DMEM中で器官培養を行った。EDHF反応は、培養とともに減弱した。SK3の過剰発現により、EDHF反応が増加する傾向が認められた。 EDHF反応は、ギヤップジャンクションの阻害薬で抑制された。EDHF反応に関与するコネキシン(CX)を検討したところ、CX37,CX40,CX43,CX45が候補遺伝子として同定された。CX40は内皮細胞に、また、CX43は内皮と平滑筋に発現していた。各遺伝子をアデノウイルスに入れて、過剰発現させて、EDHF反応の変化を検討したところ、EDHF反応がやや増強する傾向が認められた。全体的に、器官培養とともにEDHF反応が減弱するため、様々な条件を試みたが、EDHF反応を保つ条件を見いだすのは困難であった。In vivoでの検討が課題として残った。 また、EDHFと病態についても検討した。ラット卵巣を摘出によりエストロゲンを減少させると、血管におけるCX43,CX40の発現が低下し、EDHF反応が低下することが判明した。 以上の結果より、EDHF反応にSK3,IK,コネキシンが関与することが推定された。
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