研究課題
神経細胞の機能と形態を保持するために必要なエネルギーは、ミトコンドリアによって供給される。神経細胞は他の細胞と異なり長い軸索を持っている。そのため、軸索末端に至るまでエネルギーを供給するためには、軸索輸送によってミトコンドリアが運ばれなければならない。軸索内におけるミトコンドリアの輸送が破綻すると、様々な病態が引き起こされる。特に、軸索変性はミトコンドリア輸送と深く関与していると考えられる。一方、ミトコンドリアは酸化呼吸によってATPを供給する際、フリーラジカルを大量に放出する。この一酸化窒素は、細胞に対して毒性を持ち、ミトコンドリアの酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)によって除去されている。本研究では、これらの知見に基づき、さらに、ミトコンドリアの軸索内輸送動態がフリーラジカルによってどのような影響を受け、軸索変性に至るのかを明らかにすることを目的とした。実験は、生体内の微小構造の動態を生きたままリアルタイムに観察できるビデオ増感顕微鏡を用いて行った。本法により、フリーラジカルによるミトコンドリア輸送の動態を経時的に観察し、輸送の障害から軸索変性にいたる経過を解析した。前年度までに、1)フリーラジカルの添加がミトコンドリア輸送を遅延、減少させる、2)フリーラジカルの添加はミトコンドリアの軸索輸送を阻害するのみならず、軸索変性を引き起こす、3)SODを阻害して内因性のフリーラジカルを増加させても同様に軸索変性を起こす、4)フリーラジカル除去薬は、フリーラジカル誘導性ミトコンドリア軸索輸送障害及び軸索変性を抑制する、5)フリーラジカルにより、ミトコンドリアは膨張する、ことを示した。本年度では、フリーラジカルのうち、一重項酸素と一酸化窒素はミトコンドリア輸送阻害作用をもつが、ヒドロキシルラジカルはその作用が小さいことを示した。これらの結果は図表化し、現在論文作成中である。
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Journal of Photochemistry and Photobiology B, Biology 86(1)
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