16年度の研究では、新生仔ラットに由来する心筋細胞から温度応答性培養皿を用い、作製した心筋シートは積層後すみやかに機能的なギャップ結合の形成し、極めて早期(34±2分(n=24))に電気的に結合し、同期して拍動することが分かった。17年度は、移植医療で心筋細胞の代替細胞として注目されている骨格筋芽細胞と線維芽細胞を用い、それらの各細胞シートが心筋シートと電気的に結合性を示すのかについて調べた。新生仔ラット由来の心筋細胞、ヒト骨格筋芽細胞、NIH3T3マウス線維芽細胞を用い、温度応答性培養皿により各細胞シートを得た。次に2枚の心筋シート間に心筋シート、骨格筋芽細胞シートまたは線維芽細胞シートを挿入し、2枚の心筋シートが電気的に結合するまでの時間を、多点細胞電位記録システムで測定し、その時間を各細胞シート間が電気的に結合した時間とした。心筋シート、骨格筋芽細胞シート、線維芽細胞シートを挿入した時、2枚の心筋シートはそれぞれ、31±1分(n=3)、904±41分(n=4)、113±12分(n=5)で電気的に結合した。また心筋細胞だけでなく骨格筋芽細胞、線維芽細胞でもギャップ結合の構成蛋白質であるコネキシン43の発現が認められた。また、心筋細胞と線維芽細胞間にもコネキシン43の発現が認められた。またギャップ結合を通過できる低分子物質を用いたところ、線維芽細胞シートから心筋細胞シートへの低分子物質の移動が認められた。これらの結果は、心筋細胞は非心筋細胞とも、ギャップ結合を介し電気的に結合する可能性を強く示唆している。
|