研究課題/領域番号 |
16500271
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
|
研究分担者 |
稲瀬 正彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80249961)
千葉 惇 近畿大学, 医学部, 助手 (30155311)
|
キーワード | 二足歩行 / サル / 大脳皮質 / 大脳基底核 / 一次運動野 / 流れベルト / ムシモル / 神経細胞活動記録 |
研究概要 |
本研究の目的は二足歩行における高次中枢制御機序を実験的に解明することである。我々の糖代謝陽電子撮影法(PET)を用いた研究から、二足歩行を流れベルト上で学習したサルの歩行中には大脳皮質の一次運動野を含む複数の高次脳領域が賦活されることが明らかとなってきた。このことから平成16年度では一次運動野に着目し、二足歩行を学習したサルにおいて限局した皮質領域を神経薬理学的に不活性化すること、さらには歩行中における皮質神経細胞活動を導出記録することから、二足歩行制御における一次運動野の機能的役割を明らかにしようと試みた。 得られた結果は以下の二点に要約される。第一に、ムシモル(抑制性神経伝達物質であるGABA_Aのアゴニスト)を一次運動野の片側下肢領域へ選択的に微量注入すると注入側の対側下肢における限局した関節の運動が障害され、跛行が生じた。両下肢間の着地相および遊脚相時間に有意差はなかったが、対側下肢では同側下肢に比べて着地相早期の二脚支持期間が延長し、仮想的重心の投射地点から離床点までの距離が前後方向おいて短縮した。第二に、無拘束の状態で二足歩行するサルの一次運動野・下肢領域から細胞外記録された神経細胞の殆どが、歩行周期にともなってその活動を規則的に修飾した。流れベルトの速度を0.4〜1.5m/sの範囲内で変化させると、一歩行周期中の最高発射頻度とベルト速度との間に正の相関が認められた。 以上の結果はサルの一次運動野が二足歩行の制御において、体幹加重の支持および推進力の生成に深く関与すること、さらには霊長類下の哺乳動物とは極めて異なる様式で基本的な歩行リズムを生成する脊髄神経回路網を直接的および/または間接的に制御することが示唆された。
|