研究課題
本研究の目的は系統発生学的により高等なマカクサルを用いて、ヒト二足歩行における高次中枢制御機序を実験的に解明することである。平成16年度では無拘束の状態で流れベルト上を歩行するサルの大脳皮質から神経細胞活動を導出記録する手法を確立した。この研究手法を用いて平成17年度では、皮質運動関連領域から単一神経細胞活動を導出記録して、歩行中の神経細胞活動の修飾様式から歩行運動における各皮質領域の分担制御機序を明らかにしようと試みた。得られた結果は以下の二点に要約される。1.一次運動野の神経細胞活動:四足歩行するサルの一次運動野・下肢領域に存在する神経細胞の殆どは歩行周期に一致した周期的な発射活動様式を示した。一歩行周期中における発射頻度の頂値は、歩行を継続する期間を通して減少することなくほぼ一定に保たれた。これらの神経細胞の多くは発射頻度を歩行速度の増加に伴って増加させた。四足歩行において周期的に活動した神経細胞は二足歩行においても同様の発射様式を示し、発射頻度の頂値は四足歩行時に比べて増加した。2.背側運動前野の神経細胞活動:四足歩行するサルの背側運動前野・下肢領域に存在する神経細胞の多くは、歩行の開始時にそれらの発射頻度を増加させた。これらの神経細胞活動は歩行周期に一致しない非周期的なものであり、それらの発射頻度は歩行の継続に伴って減少した。また二足歩行においても同様の発火様式を示した。以上の結果はサル大脳皮質の各運動領野が歩行運動の異なる機能的側面を制御することを示しており、一次運動野が推進力の生成に、背側運動前野が歩行の発動(開始)に関わることを示唆する。そして二足歩行運動を遂行することが、四足歩行に比べてより強く大脳皮質の制御機序に依存する可能性が示唆された。
すべて 2006
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In Adaptive Motion of Animals and Machines (eds. Kimura H., Tsuchiya K., Ishiguro A. and Witte H.) (Springer-Verlag, Tokyo.)
ページ: 53-64
In Adaptive Motion of Animals and Machines (eds. Kimura H., Tsuchiya K., Ishiguro A. and Witte H.) (Springer-Verlag, Tokyo)
ページ: 249-259