研究概要 |
聴覚情報処理については初期情報処理様式が触覚の場合と極めて類似することを見いだした。1)少なくとも二つの処理経路が存在する。一つは第一次聴覚野(PAC)から外側、さらに後方へ向かう流れであり(PAC-belt-pSTG-PPC)、いわゆるwhere parthwayに相当する。もう一つはRACから外側、前方へ向かう流れであり(PAC-belt-aSTG)、おそらくwhat pathwayに相当する。2)連続する活動の時間差は約4ミリ秒である。3)初期活動は全て3相構造を示す。これらの結果より、触覚情報処理にみられた基本処理様式(Inui et al. Cereb Cortex 2004)がそのまま聴覚情報処理にもあてはまることが確認された。このことはこれらの様式が感覚系を問わず感覚情報処理に共通した処理様式であることを伺わせる。結果は学術誌に発表した(Inui et al. Cereb Cortex,2006)。さらに、これらの処理様式の類似性が視覚情報処理についてもあてはまるか否かを検討した。上記1-3の類似点は視覚情報処理についても確認され、これらの処理様式が広く、ヒト感覚情報処理に適用されることが明らかとなった。即ち、視覚刺激による皮質処理は、1)所謂背側と腹側路に相当する並行する経路で行われる、2)連続する皮質活動の時間差はおよそ4-5ミリ秒である、3)早期成分は全て10ミリ秒間隔で2回位相を逆転させる3相構造を示すが、その後出現する後期活動は位相逆転がなく持続が長い、などである。結果の一部は学術誌に発表予定であり(Inui et al. Neuroimage, in press)、他の感覚系との比較も含めた詳細な検討結果は現在投稿中である(Inui et al. J Neurophysiol)。痛覚については、触覚による疼痛抑制が生じるレベルを検討し、関門制御説が推定するような脊髄レベルでの抑制ではなく、皮質レベルでの抑制であることを見いだし、学術誌に報告した(Inui et al. Cereb Cortex, in press)。
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