研究概要 |
聴覚情報処理については活動のタイミングに絞って解析し、並行する少なくとも二つの処理経路が存在することを明らかにした。即ち、第一次聴覚野(AI)から始まり側頭葉平面を外側へ流れる経路(AI-AII一上側頭回)と、AIからAIIを経て頭頂連合野(PPC)やplanum temporaleへ向かう経路である。いずれの経路でも、ある興奮が次のステップへ伝えられる潜時は約4ミリ秒である。また刺激後概ね50ミリ秒以内の活動は全て類似した3相構造を示した。この結果は初期情報処理が皮質部位を問わず共通したメカニズムで行われることを示している。また、これらの活動様式は触覚および痛覚処理と極めて類似した。これらの結果は学術誌に報告した(Inui et al. Cereb Cortex 2006a)。次いで視覚についても同様の研究を行い、初期情報処理様式が触覚の場合と極めて類似することを見いだした。1)少なくとも二つの処理経路が存在する。一つは第一次視覚野(V1)からV2、V4へと下面を前方へ向かう流れであり、いわゆるwhat parthwayに相当する。もう一つはV1から上方、前方へ向かう流れであり(V1-V6,MtV5)、おそらくwhere pathwayに相当する。2)連続する活動の時間差は約4ミリ秒である。3)初期活動は全て3相構造を示す。これらの結果より、上記触覚、痛覚および聴覚情報処理にみられた基本処理様式がそのまま視覚情報処理にもあてはまることが確認された。このことはこれらの様式が感覚系を問わず感覚情報処理に共通した処理様式であることを伺わせる。結果は学術誌に発表した(Inui K at al. Neuroimage 2006; J Neurophysiol 2006)。
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