研究概要 |
脳磁図を用いて触覚(Inui et al. Cereb Cortex 2004)、痛覚(Inui et al. Cereb Corex 2006b)、視覚(Inui & Kakigi JNP 2006; Neuroimage 2006)及び聴覚(Inui et al. Cereb Cortex 2006a)情報処理について検討し、以下のような共通点を見いだした。1)感覚情報は基本的に隣接する領野へ約5ミリ秒の潜時で順次伝えられ、その結果一定方向へ向かう処理の流れを形成する。例えば触覚では約4ミリ秒の間隔で、3b野、1野、5野が順に活動する。2)並行する複数の処理経路がある。例えばV1-V2-V4の視覚腹側路とV1-V6,V1-V2-V5の背側路などであり、並列階層処理の概念に矛盾しない。3)初期活動は全て活動の向きを約10ミリ秒間隔で逆転させ、共通する層内伝導様式を示唆する。初めの活動が大脳皮質第IV層への入力を反映しているものと考えられる。この知見は、動物での電流源密度解析を用いた研究結果と極めて類似し、ほ乳類に共通する処理様式であると推定される。4)複数の初期活動の後、持続の長い後期活動が生じる。活動潜時、活動様式が初期活動とは異なり、異なる処理を分担していると考えられる。初期活動が、最小単位で受容された情報を洗練する過程、後期活動が一定レベルまで洗練されまとまった情報を受け取り、認知に関わる過程ではないかと考えている。 以上の知見は動物での解剖学的あるいは電気生理学的手法を用いた階層性研究と合致し、ヒトでの.階層的処理を支持するのみならず、各感覚系に共通する基本的情報処理様式の一部を明らかにした。
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