研究課題
基盤研究(C)
嚢虫症はもっとも難治性な人獣共通寄生虫症の一つであり、アジア、アフリカ諸国を中心に世界規模でその流行が拡大してきている。しかし嚢虫症の原因である有鉤条虫は、人以外の終宿主がいないこと、虫卵がきわめて危険なこと、中間宿主がブタであることなどからワクチン開発の試みは極めて限定されている。研究代表者はこれまで、ネコ条虫-ラットのモデル系を使って、嚢虫症のDNAワクチン開発のための新しい戦略を検討してきた。その結果、ライブラリーワクチンの手法により、嚢虫症に有効なDNAワクチンの開発が可能であることが示唆された。しかし実際にDNAワクチンとして有効な遺伝子を特定するためには、膨大な候補遺伝子から何らかの方法で有効な遺伝子を選抜することが必要である。ブタを用いた遺伝子のスクリーニングには、取り扱い、コスト、安全面で大いに問題がある。そこで、有効嚢虫症の唯一の実験モデルであるNOD-Scidマウスを用いて、ワクチン候捕遺伝子のスクリーニング系を確立することが本研究の目的である。平成17年度までに作製したライブラリーの性状について検討した結果、ワクチンとして使用するには不十分であることが判明した。そこで最終年度になってから、再度ネコ条虫のオンコスフェアからmRNAを抽出し、5'および3'Raceのキットを使用した完全長cDNAライブラリーを作製した。作製したライブラリーには既知のテニア科条虫防御抗原のホモログや未知の蛋白質の遺伝子を含んでおり、ライブラリーワクチンとして使用できるものと考えられた。
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