マカカ属サルのBウイルス(BV)感染を血清学的にインハウスで診断するために、ヒヒヘルペスウイルス(HVP2)を代替抗原に用いたキットを開発してきた。抗原性の点で類似したHVP2とBVの両ウイルスは、ヒトでの致死性という点では大きな違いが存在する。BVをクラス4たらしめる責任遺伝子が存在し、近縁のヒヒヘルペスウイルスを解析することによってその遺伝子が浮き彫りになるのではないかという仮説をたて、これを解析することにした。 米国のカニクイザルに由来するBVの塩基配列について概ね決定し、既知のアカゲザル由来BV(E2490株)とは異なるカニクイザル固有のBVの存在を示唆した。マウスで神経病原性の強いnv型のOU1-76株について約1kbを残して決定し、既知株(X313株)との相同性が各orfのアミノ酸配列において79〜100%であった。神経病原性のないap型のOU2-5株についても、90%以上の塩基配列が判明している。OU2-5/X313間の相同性は、各orfのアミノ酸配列において75〜100%一致した。nv型とされるA189164株について、US領域の塩基配列が明らかになった。US領域の13個のorfに限れば、OU1-76株と最も近縁で、OU2-5株がこれに次ぎ、HVP2nvのX313株が最も遠い存在となった。この結果はX313株がHVP2nv/apのキメラウイルスである可能性を示唆した。さらに、チンパンジーから分離されたChHVについても、14個のorfが決定されている。これまでの結果から、ヒトの単純ヘルペスウイルス2型と最も近縁のウイルスであることが推定される。ただ、このウイルスがチンパンジー固有のウイルスなのか、あるいはアクシデンタルにヒトから感染したものなのかは未解決の問題として残されている。
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