研究概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の原因遺伝子であるジストロフィンは,全長2.4Mbにもおよぶ巨大な遺伝子であり,少なくとも7つのプロモーターにより分子量の異なるジストロフィンアイソフォームの組織特異的な発現が制御されている。さらに,スプライシング等のより多数の分子種が,生体内で産生されていると考えられるが,その生理的機能については,ほとんど不明である。本年度は,Cre-loxPシステムを用いて,ジストロフィン遺伝子座を完全に除去したモデルマウスを作成することを目標として研究を行った。その結果,計画通りにジストロフィン遺伝子領域を完全に欠損したマウスの作成に成功した。このモデルマウスは,今まで広く利用されてきた筋ジストロフィーモデルマウス(点突然変異により筋型ジストロフィンのみを欠損)とは,様々な点で表現型が異なっており,この新しいモデルマウスの解析により,ジストロフィン遺伝子の隠された機能を明らかにできるものと期待される。また,このマウスの作成により,ヒトジストロフィン遺伝子を発現する新しいモデルマウス作成の基礎が築かれたと考えられる。以上の点から,本年度は,予定通りに研究が進展したと評価できるものと思われる。
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