研究概要 |
これまでの研究により、G3世代のラットにおいて極めて矮小な個体が誕生し、これらのラットについてDNAマイクロアレイを用いた解析の結果、少なくとも10個程度の遺伝子の発現がほぼ消失している結果を得た。今年度の研究では、これらのラットについて、脳および肝臓から採種されたRNAサンプルを用いて、RT-PCR法によって、その遺伝子発現を確認する実験を行った。マイクロアレイによる実験で消失している想定された4つの遺伝子、Cyp3a3,Sce1,Alas1,Lipcについてプライマーを設計し、RT-PCR法によって発現の有無を解析したところ、Cyp3a3遺伝子については矮小固体で発現が抑制されていたが、その他の遺伝子についてはコントロール個体にくらべ発現量は低下しているものの、少量の遺伝子発現が観察された。この結果により、遺伝子が完全にノックダウンされていないことが予測されたので、これら3遺伝子については今後の解析から除外した。一方、Cyp3a3遺伝子については矮小個体での発現抑制が観察されたので、これらの個体のゲノム解析を行って、どのような遺伝子破壊が起こっているのかを解析した。ラットCyp3a3遺伝子は13個のエクソンからなることが報告されていたので、それぞれのエクソンを増幅するプライマーを設計し、染色体上の欠損エクソンの検出を試みた。ところが矮小個体について、全ての個体の全てのエクソンが染色体上に存在すると言う結果を得た。そこでプロモーター領域の染色体領域欠損を確認するため、第1エクソンの上流5kbについて4セットのプライマーを設計し、ゲノム解析を行ったが、全ての領域が存在する結果を得た。すなわち矮小個体はCyp3a3遺伝子について遺伝子発現がほぼ完全に抑制されているにもかかわらず、ゲノムDNAに大きな欠損が観察されないという結果を得た。現在、さらに詳細な解析を行っている。
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