ラットの胸腺原基をヌードマウスの腎被膜下に移植しておくと、胸腺上皮のみが生着し、ホストマウスの樹状細胞や前駆T細胞が胸腺内に集積し、やがてT細胞免疫能が獲得される(TGヌードマウス)。TGヌードマウスにはGVH病やSLE様の全身性の自己免疫病は発症しない。TGヌードマウスは第三者の皮膚を拒絶し、胸腺ドナーとホスト系の皮膚は生涯生着することから、両者を自己と見なしている。しかしながらTGヌードマウスには多臓器に臓器局在性の自己免疫病の発症が見られる。TGヌードマウスでは卵巣にも自己免疫病が高頻度に発症する。腎被膜下にマウスの卵巣を移植しておくと激しい臓器破壊がみられる。ところが胸腺ドナーの卵巣を腎皮膜下に移植した場合は組織障害は生じず、正常に発育した。またTGヌードマウスの移植ラット胸腺の中にマウスの胸腺を移植しておくと、ラットとマウスの胸腺上皮の共存状態が構築され、自己免疫病の発症は生じなかった。これらのことは異種卵巣の機能発現がTGヌードマウスで再現できることを示している。 卵が完全に消失する250radのx線を照射したscidマウスの卵巣内に、あるいはscidマウスの卵巣を卵巣間膜を残して摘出し、卵巣間膜内にジャンガリアンハムスターの卵巣を移植した。膣スメアの経時的な検査ではどちらの処置でも移植後一週間過ぎから発情サイクルがあることが確認できた。そこで輸精管を切除した雄マウスと同居させた。その結果約2ヶ月の間でおよそ70%のマウスに膣プラグが確認できた。膣プラグが出来たマウスの子宮内にジャンガリアンハムスターの副睾丸から採取した精子を注射し、妊娠を確認中である。
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