研究概要 |
本研究は外傷およびOA軟骨の表層部および欠損部を自家骨膜あるいは人工膜で被覆し、膜直下に骨髄由来間葉系幹細胞を注入して軟骨表層部や欠損部を修復し健全な軟骨組織の再生をはかることを目的としている。実験は、十分な強度と関節液の侵入を完全に妨げない体液透過性を有する自家骨膜あるいは人工膜の作製(実験1)と、OAや外傷により粗造となった軟骨表層部および軟骨欠損部を自家骨膜あるいは人工膜で被覆して骨髄由来間葉系幹細胞を注入する軟骨組織の修復過程を調べる動物実験(実験2)の2つの実験から成るものである。 本年度は間葉系幹細胞の培養、自家骨膜の採取およびウサギの関節軟骨表層部にコラーゲンゲル-滑膜由来間葉系幹細胞の複合体を移植する以下の1〜4の実験を行った。 1.移植実験に先だち、骨膜由来、滑膜由来および軟骨由来の各間葉系幹細胞の軟骨分化能を調べたところ、滑膜由来間葉系幹細胞がすぐれた分化能を示した(関矢、市野瀬、宗田、白澤他(JCB,2005))ことから移植する細胞は滑膜由来間葉系幹細胞とした。 2.移植実験に先だちコラーゲンゲル-滑膜由来間葉系幹細胞の複合体の軟骨分化過程を調べたところ、培養21日でコラーゲンタイプIIとプロテオグリカンの軟骨マトリックスと軟骨様細胞とから成る直径約7mmの軟骨組織塊に成長することを明らかにした(横山、関矢、市野瀬、宗田他 投稿中)。 3.ウサギの関節軟骨組織に軟骨欠損部を形成し、コラーゲンゲル-滑膜由来間葉系幹細胞の複合体を移植し、骨膜で縫合する手術を行った。 4.移植後1日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後の関節軟骨組織を採取し、光顕および電顕での観察、免役組織化学による蛋白の局在およびPCRによる遺伝子解析を行いin vivoでの軟骨組織の修復および再生過程を調べている。
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