自家骨膜で被覆し間葉系幹細胞を注入する関節軟骨修復に関する本研究を以下のごとくに実施した。 移植実験に先だち骨髄由来、滑膜由来および軟骨由来の各組織由来間葉幹細胞の軟骨分化能を調べる実験を行った。滑膜由来間葉幹細胞が最も優れた軟骨分化能を有することから、移植に用いる幹細胞は滑膜由来とした。 移植実験に先だちコラーゲンゲル培養を行い間葉幹細胞の骨および軟骨分化能を調べる実験を行った。コラーゲンゲル培養において間葉幹細胞の多分化能が示されることより、移植に用いる間葉幹細胞はコラーゲンゲル複合体とした。 ウサギの関節軟骨組織に骨、軟骨欠損部を形成し、コラーゲンゲルー滑膜由来幹細胞の複合体を移植し、骨膜で縫合する手術を行った。埋入1日、4週、8週、12週および24週の移植した部位を含む骨、軟骨組織を採取し、修復過程を光顕、電顕および免疫組織化学を用いて調べた。その結果以下のことが明らかになった。 1.埋入1日でウサギの骨、軟骨欠損部の骨膜下のコラーゲンゲル中に多数の幹細胞を確認した。 2.埋入4週で骨膜直下の幹細胞はコラーゲンゲル中で軟骨細胞様細胞へと分化した。軟骨細胞様細胞に分化した幹細胞はタイプIIコラーゲンとコンドロイチン硫酸から成る軟骨基質をさかんに産生した。深層の幹細胞は肥大軟骨細胞様細胞へ分化した。 3.埋入8週で骨、軟骨欠損部に被覆した骨膜組織は薄くなり、骨膜下の幹細胞は成熟した軟骨細胞様細胞へと分化した。 4.埋入12週で欠損部周囲の骨、軟骨組織と再生された骨、軟骨組織との境界が消失し連続性が保たれた。深層の骨領域は上昇して、骨、軟骨欠損部は周囲の正常組織に近づく変化がみられた。 5.埋入24週で骨、軟骨欠損部の組織は周囲組織と区別がつかないまでに修復された。 以上の結果より、自家骨膜で被覆し間葉系幹細胞を注入する系で関節骨、軟骨組織の修復が出来ることを明らかにした。
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