研究課題/領域番号 |
16500288
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山根 徹 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助手 (60220430)
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研究分担者 |
神谷 瞭 日本大学, 大学院・グローバルビジネス研究科, 教授 (50014072)
三俣 昌子 日本大学, 医学部, 教授 (40064589)
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キーワード | 動脈硬化症 / ずり応力 / 血管内皮細胞 / 基底膜コラーゲン / Matrix metallo-protease 2 |
研究概要 |
我々は日本人の粥状硬化性病変が学童期から発症することを報告してきた。そのため動脈硬化症の予防には粥状硬化発生早期における対策が必要と考えられる。基底膜形成により内皮細胞は安定化するが、内皮安定化保持作用を有する定常性ずり応力の作用機構の解明は病変発生の予防法に加え、病変評価法の開発の一助にもなると考える。 ずり応力を内皮細胞に実験的に負荷し、以下の結果を得た。 1)定常流性高ずり応力負荷により、内皮細胞の基底膜コラーゲン産生が亢進し、mRNAレベルも増加した。 2)ずり応力負荷により、内皮細胞が産生する基底膜コラーゲン分解酵素であるMMP2の分泌が抑制されていた。このMMP2分泌抑制効果はずり応力負荷を解除するとすぐに回復していた。 3)ずり応力負荷によるMMP2分泌抑制はアルブミン添加により濃度依存性に回復した。 4)GFPを付加したMMP2を内皮細胞内に遺伝子導入し、内皮細胞のMMP2細胞内輸送を観察すると、ずり応力負荷により細胞膜下にMMP2を含んだtransport vesicleの集積が観察された。 5)細胞膜下のvesicleの膜へのfusionにはcaveolaの機能が重要である。Caveola形成阻害物質のfillipinは内皮細胞のMMP2分泌を部分的に抑制していた。 血管壁の脂質沈着は血流が乱れた部位に好発し、これらの部位には低ずり応力が負荷している。反対に、分岐の少ない血管では高ずり応力が作用し内皮細胞の機能が安定することが分かった。特に、その機序の一つとして高ずり応力が内皮細胞の基底膜コラーゲン産生を亢進させ、また、MMP2分泌抑制を介してさらに基底膜形成を繊密化することが理解された。
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