研究概要 |
医療技術革新およびデバイス開発を進める上で,生体の力学的性質を知ることは極めて重要である.本研究は設定された医療デバイス開発を最終目標とし,その開発に必要な生体軟組織の様々な力学条件に対する力学的反応を詳細に調べた.また,計算シミュレーション技術を駆使し,実験では測定困難な物性値の測定,デバイス開発への予備試験を行った.さらに小型引張り試験機の開発も行った. 1.肝臓の力学特性の解明 1.1 試験機・試験法の開発 顕微鏡下で組織のミクロな変形をその場観察できる負荷システムを開発・製作し,試験に供した.また,引張り試験時に軟組織をしっかりと固定することができるジグや,環境を模擬した容器などを製作し,実験を行った. 1.2 肝臓の力学特性試験 圧縮試験において,ひずみ速度依存性が見られ,それらに対して肝臓の損傷モデルを提案した.試験片サイズの影響および圧縮場におけるその場観察を行うことにより,微視的な損傷メカニズムの解明と損傷モデルを構築し,巨視的な損傷モデルの妥当性が確認された. 1.3 変形シミュレーション 圧迫型止血器具の開発を行うため,豚肝臓を用いて肝臓組織および腸膜の機械的特性の調査,肝臓に見られる非線形挙動の有限要素解析への適用法の検討,肝臓モデルによる変形シミュレーションから止血器具形状の最適化を行った. 2.心外膜組織の力学特性の解明 豚,牛,ヒトの心外膜を採取し,それぞれの機械的特性を調査し,比較を行った.ヒトの心外膜は他の動物と比較すると膜厚は十分厚いが,膜の引張り強さは半分程度と弱い.ヒトの心外膜を生体弁として使用できるよう強化するためには十分な荷重に耐えられるよう心外膜の厚さを増すか,心外膜を構成している線維自体を強化する,もしくは線維の密度を大きくする必要がある. 3.デバイス開発 心房中隔欠損孔を経カテーテルを用いて閉孔するデバイスを考案し,特許を提出した.
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