研究概要 |
脳の異なる部位間での活動のコヒーレンスはそれら部位間での機能的結びつきを表すものと考えられており,それらを計測できれば脳が情報処理を行う時,どのような部位が協調して働くか,すなわち脳のネットワーク構造を調べることができる.本研究はこのような考えに基づき,まず頭部表面で無侵襲で計測した磁場のデータから脳の各部位間のコヒーレンスを推定する数理アルゴリズムを適応空間フィルターをベースにして開発を目指し,平成16年度において主として,相関を持つ主要な信号源が2個と仮定出来る場合にコヒーレンスや時間相関を計算する手法をソフトウエア化を行い,また,推定結果の精度と,信号対ノイズ比,背景脳活動の影響などとの関係を調べた. 相関を持つ主要な信号源が2個と仮定出来る場合のネットワーク推定手法のソフトウエア化に関しては,脳活動の時間相関およびコヒーレンスを脳磁界計測データから計算し可視化するユーザーフレンドリーなソフトウエアをカリフォルニア大学と共同で開発し,カリフォルニア大学のホームページ上で興味のある研究者は誰でもダウンロードし使用できるような形で世の中に公開した. 推定結果の精度と,信号対ノイズ比,背景脳活動の影響との関係の解明に関しては,外部妨害磁場,特に関心対象外の背景脳活動による脳磁界が測定データに含まれる事は脳磁界計測では普通の事であり,コヒーレンスや時間相関の推定精度にこれらがどのように影響するかを現在コンピュータシミュレーションにより評価している.また,これらの影響を低減・除去する提案としてコバリアンスディファレンス法およびプレホワイトニングを用いた方法を提案し,これらの有効性をコンピュータシミュレーションにより現在評価中である.
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