研究概要 |
体内埋込みモータ駆動補助人工心臓を対象に,適応,増殖,進化,自己診断などの生物がもつ高度機能の実現を目的とする研究を行うため、1)小型・軽量のモータ駆動補助人工心臓の開発、2)32bit_Risc型高性能ワンチップマイクロコンピュータを用いた自律分散オブジェクト型コントローラの開発を行った. モータ駆動補助人工心臓は、ブラシレスモータとボールねじより構成した.血液ポンプ一回拍出量を55mlとして開発した結果,大きさ285cc,重さ360gと拍動型補助人工心臓としては世界最軽量の拍動型補助人工心臓を開発できた. 自律分散オブジェクト型コントローラは,32bitRISC型高性能ワンチップマイクロコンピュータを中心に構成し,オブジェクトマネージャを中心に,入力オブジェクト層,制御オブジェクト層,出力オブジェクト層の3レイヤー構造とし,各層を構成するオブジェクトは生物を構成する細胞を模擬し単なる入出力ユニットとして動作させた.制御オブジェクト層を構成する各オブジェクトは患者ごとに医師の経験を補助人工心臓制御に反映させるためファジー推論を用い動作させた. 上記で構成する補助人工心臓システムをin vitro実験により性能を評価したところ,モータ駆動補助人工心臓は自律分散オブジェクト型コントローラによるファジー制御で安定に動作し,動脈圧100mmHgで3.2L/minの血液を拍出することができた. また人工心臓異常の自己診断オブジェクトを達成するため,適応ノイズフィルタによる外来雑音抑制機能を有する電子聴診システムを東京大学で開発する波動型補助人工心臓装着山羊に適応し評価したところ,人工心臓異常の24時間前に人工心臓発生音に変化が現れること,また人工心臓発生音の自己相関をとることで自然心臓の心拍数を算出できることがわかり,人工心臓発生音の解析により人工心臓アクチュエータの機械面の情報のみならず,生体の生理学的情報を取得できることもわかり,生体の状態を含めた自己異常診断を達成できる可能性があることが示された.
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