研究概要 |
制御性のよい拍動型補助人工心臓を対象に,適応,増殖,進化,自己診断など生物がもつ高度機能実現を目的とする研究を行っている.昨年度は,ポンプ一回拍出流量55mlの設計として大きさ285ml,重さ360gの小型軽量のモータ駆動型補助人工心臓と32bitRiscワンチップマイクロコンピュータを用い自律分散オブジェクト型コントローラの開発を行った.今年度は,1)自律分散オブジェクト型コントローラ用ソフトウェアの改良,2)FPGA適用型オブジェクト駆動制御システムの基礎開発,3)ニューラルネットを用いた人工心臓異常診断の検討,以上3つの研究を行った. 1)自律分散オブジェクト型コントローラ用ソフトウェアの改良 主にモータ駆動補助人工心臓のポンプ特性および駆動効率の性能向上を目的にファジーモータ回転角度制御部,ファジーモータ回転速度制御部の改良を行った.その結果,人工心臓最大拍出量は改良前の3.2L/minから5.1L/minに増加した.人工心臓駆動効率は最大11%であった. 2)FPGA適用型オブジェクト駆動制御システムの基礎開発 各プログラム要素をハードウェア的独立要素とし物理的に自律分散稼働さえることを目標に,32bitRisc型CPUにFPGAを組み合わせた自律分散オブジェクト型コントローラver.2の基礎開発を行った.回路基板は,縦12cm×横9cm,厚み1.5cmである.FPGAを32bitRISC CPUのメモリーおよびデータバスに接続し,拡張型I/Oモジュール群として使用する構造とした.今後,ver.1のコントローラのソフトウェアモジュールをFPGA内に移し自律動作させる予定である. 3)ニューラルネットを用いた人工心臓異常診断モジュールの検討 ポンプ駆動開始直後の正常状態人工心臓発生音を教師信号にする入力400ユニット,中間層20ユニット,出力1ユニットから構成するニューラルネットワークを構築した.本手法評価のため他施設のモータ駆動補助人工心臓を用いた長期生存動物実験で評価したところ,ダイアフラムの破損24時間前からニューラルネットワークの出力が変化することが確認でき,ニューラルネットワークを用いることで人工心臓異常の自己診断が可能であることが分かった.
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