血管や心臓内で生じた血栓は、一部が剥離して栓子となって血管内を飛来し、脳梗塞や肺塞栓を引き起こすことが多い。現在、この栓子を検出する方法として、超音波ドップラ法があるが、プローブ固定などの問題で長時間測定が困難、栓子検出精度が検査者の手技で大きく異なるなどの問題点がある。そこで本研究では、非侵襲的に長時間測定が可能である電気インピーダンス法を用いた栓子検出法について検討し、主として以下の結果を得た。 1 高精度高速電気インピーダンス測定装置の開発 電気インピーダンス測定の高精度化に必要な技術仕様を盛り込んだ、光アイソレーションインピーダンス測定装置を開発した。これにより、測定周波数1MHzにおいて測定精度0.1%、測定速度1msを実現した。また、将来の無拘束化を目指して、Bluetooth通信モジュールの通信性能評価を試み、臨床使用に十分な通信性能があることがわかった。 2 頸部電気ファントム構築と頸動脈モデル内の栓子検出 皮膚・脂肪・筋肉・血管から構成され、生体組織と等価な電気特性をもつ頸部血管電気ファントムを製作し、血管内の栓子検出が可能かどうかを検討した。電極は、電流電極間隔70mm、電圧電極間隔10mmで電極(直径3.5mm)を皮膚表面上に直線上に配置し、牛血液内の5mm角栓子によるインピーダンスの変化率は、0.12±0.16%であることがわかった。 3 栓子通過時のインピーダンス変化量の理論的算出 実際に頸部から頸動脈中の栓子を検出する条件を設定し、栓子通過時のインピーダンス変化量をゲゼロビッツ理論、および、10頭分の豚血液から得られた血液・栓子の導電率周波数特性を用いて計算した。計算の結果、頸動脈を通過する栓子は現在の測定システムで直径3mmまで、理論的には直径0.5mmまで検出可能であることがわかった。
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