昨年度までに閉鎖循環式高密度培養装置(Able社製BRK-05型:一部改良>を用いて線維芽細胞とコラーゲン細線維から高密度結合組織モデルを作成し、引き続き0.1mg/ml Matrigel(基底膜の代替標品)と大動脈平滑筋細胞(Clontech社AoSMC)を装置内に投入することにより大動脈の筋層を重ね合わせて血管壁モデルを作り上げ。この血管壁モデルをリアクターより回収して3日間培養すると、血管壁モデル中の培養平滑筋細胞では平滑筋特異的な遺伝子ヒト平滑筋型ミオシン重鎖(hSM-V)のmRNA発現量は3日間培養後、単層培養時の発現量の約8倍に上昇していた。その結果は第9回日本組織工学会(京都)ならびに第39回日本結合組織学会(東京)において発表した。 また高密度結合組織モデルにケラチノサイト40×10^4個を播種し、合成マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)阻害剤であるCGSを10μM加えた皮膚モデル用培地(10%FBS DMEMとEpiLifeを1:1の割合で混合し、1.8mM Ca添加した)で14日間培養することにより人工皮膚を作成することが出来た。光学顕微鏡観察の結果、真皮層の上に表皮細胞による扁平上皮層が形成され、基底層、有棘層、角質層が区別された。走査電子顕微鏡観察の結果、有棘層においては多数の細胞間橋が観察された。高密度培養装置を用いてMMPsが発現する前に人工真皮を作製し、合成MMPs阻害剤存在下で表皮細胞を播種することは、人工皮膚作製に有用な手段であることがわかった。 研究期間終了となるが、引き続きこれらの人工組織の移植実験を行なう予定である。
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