研究概要 |
平成16年度は、1.ネットワーク・マトリックスコラーゲン(NM-コラーゲン)の効率的な調整法の確立と分子レベルでの構造解析、2.マウス好中球との相互作用の走査型電子顕微鏡による観察、で大きな成果であった。以下に詳細を示す。 1.これまでにキハダマグロ皮,ウサギ尾,ニワトリ皮などを原材料として,NM-コラーゲンの調整法を確立してきたが,本年度はさらに迅速に調整する沈殿法を検討して良好な結果を得た。本沈殿法はクロマトグラフィー法などの煩雑な作業を要しないため,簡便に短時間にNM-コラーゲンを調製することが可能である。NM-コラーゲンは特有の3本螺旋構造を保持していることにより,本質的な特徴が残っており,細胞接着に関する機能発現が期侍される。また,NM-コラーゲンの保水力は従来のコラーゲンより格段に向上する結果が得られた。さらにNM-コラーゲンのエチルアルコールに対する溶解度は著しく増大し,溶媒に均一に分散しやすい性質が示された。これらの利点はバイオマテリアルとして,アピールできる優れた長所である。 2.これまでに,走査型電子顕微鏡観察によりNM-コラーゲンは線維形成しない特性をもつことが明らかになった。この結果を踏まえて,あらかじめNM-コラーゲンを塗布したセルディスクにマウス腹腔から得た好中球を播種し,相互作用を2時間まで経時的に観察した。従来のコラーゲンを塗布した系(線維形成コラーゲンマトリックス)では,好中球は自然落下してそのままマトリックス上にいることが観察された。しかし,NM-コラーゲンを塗布した場合(網目形成コラーゲンマトリックス),好中球は積極的にマトリックスに接着し,さらに時間経過とともに埋没して好中球の細胞表面ほNM-コラーゲンで覆い隠されることが観察された。さらに2時間経過後,興味深いことに好中球はマトリックスの内部で立体的に集まるような挙動を示した。
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