弓部置換術低侵襲化のための大動脈人工血管吻合器の設計・作製についての実績報告を記載する。本年度は初年度として、まず、当施設で行った弓部人工血管置換術のビデオを再度十分検討し、断端を約1センチ外反した人工血管を大動脈に内挿することにより遠位側の人工血管・大動脈吻合に器械吻合が可能であることを確認した。本大動脈人工血管吻合器は医療器械会社マニー社が販売している縫合器マニセプスを基礎に考案したものであるが、次にマニセプスと牛大動脈、人工血管を使用して、in vitroで吻合シミュレーションを行った。この実験では、適切な人工血管・大動脈吻合における縫合針のバイトの深さ、両端針の針間距離、隣り合う両端針の間隔、針の長さ、針および糸の太さについて検討を行った。実験方法としては、マニセプスを使用して人工血管・大動脈吻合を行った後、大動脈内に100ないし120mmHgで水を注入し、吻合部の状態を観察した。また、吻合器の扱い易さについて検討した。このシミュレーションから、縫合針のバイトの深さ5ないし8ミリ、両端針の針間距離5ないし7ミリ、隣接する両端針の間隔2ミリ、針の長さ7ないし9ミリ、針および糸の太さ3-0相当がそれぞれ適切であると考えられた。このシミュレーションをもとに、CADソフトにて吻合器の設計図を作成した。その後、マニー社の担当者とカンファレンスを行い、実際に今回の研究費の予算で作成可能な吻合器を決定し、人工血管・大動脈吻合器の作成依頼を行った。現在マニー社で吻合器を作成中であり、近日完成するとの報告を受けている。吻合器完成後、さらにin-vitroにおける、大動脈・人工血管吻合のシミュレーションを行う予定である。
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