【目的】弓部大動脈瘤に対する弓部人工血管置換術の飛躍的向上のためには、短時間で出血のない確実な遠位側吻合を行うことが鍵である。本研究は、遠位側吻合のための吻合器を作製し、その有効性について基礎的実験を行い検討した。【方法】マニー株式会社が製造しているマニセプスをもとに、新たな吻合器を作製した。本吻合器はマットレス縫合を容易に行う機構を有している。摘出牛胸部大動脈とウーヴンダクロン人工血管(外径20mmと26mm)を使用した。大動脈外側にはEPTFEフェルトを使用した。縫合針は長さ9.0mmの直針付き縫合糸を使用した。【結果】1.大動脈壁厚と針受け渡しの確実性:大動脈壁厚4.6mmまでは吻合器により確実に針の受け渡しが可能であったが、壁厚4.8mm以上では困難な場合があった。2.隣接するマットレス縫合同士の距離2.0mmの場合、隣接するマットレス縫合の間に比較的容易に小曲がりペアンが貫通するスペースを認め、水注入試験では吻合部からのリークを認めた。1.0mmの場合とオーバーラップ1.0mmの場合では、隣接するマットレス縫合の間に関しては、容易に貫通するスペースを認めず、水注入試験では吻合部からのリークを認めなかった。3.吻合器の針間距離:針間距離5.0mmでは、針の受け渡し機構に支障はなく、マットレス縫合自体に貫通するスペースを認めなかった。針間距離7.5mmでは、大動脈湾曲面と組織の硬さから針の屈曲から針受け渡し機構に支障がみられることがあった。隣接するマットレス縫合がオーバーラップでない場合、マットレス縫合自体に貫通するスペースを生じ、水注入試験において吻合部からリークを認めることがあった。【結論】今回作製した大動脈人工血管吻合器では、針間距離5.0mm、隣接するマットレス縫合の間隔1.0mmの条件で、今後実用可能な大動脈人工血管吻合器が作製可能と考えられた。
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